2014年5月18日日曜日

再び ー その3(完)

さて、筆者の「疼き」から「再び」への過程を書かせていただきます。

件の楽器選定にお付き合いし、無事購入のお手伝いをできたわけですが、
試奏に用意していただいた楽器は5本(!)でした。
それぞれ特徴があり、弾き易いもの、音が拡がるもの、遠くに音を届けるもの等など
本当に迷いました。ただ弾き手は筆者ではないことがポイントとなります。
実はよくある話ですが、選定の最後は2本の内どちらか…となるわけです。

ひとつは30年前、筆者の11弦ギターを作ってくださった製作家の意欲作。
もうひとつは中古ですがとても状態が良く、筆者の好きな演奏家の使用楽器です。

どちらも本当に素晴らしい楽器です。
透明感のある音色と深みと拡がりのある豊かな音色。
弾き易さとレスポンスの良さ。

購入したのはほんの少しだけボディが小さく、とても透明感のある音色で、
これから弾き続けるとさらに深みもでてくることが分かる楽器でした。


そして帰宅後から約2ヶ月にわたって悶々とした時を過ごすことになります。



その時最後に選から漏れた楽器がアタマから離れないのです。

試奏した時、脳ミソの中で何かが「じわっ」と出たのです。実際に脳内物質が
分泌されたと思います。
毎日仕事から帰るとWebを見て、「ハァ…」「良かったまだ買われていない」
自分の年齢を考えると本当にお恥ずかしい話ですが(笑)

それから何となくもう一度楽器に触れるようになりました。古いCDを取り出しては
聴き直し、古い楽譜を持ち出してさらってみたり…
もちろん以前のように指は動きませんし、楽譜に対する筆者のレスポンスも恐ろしく
低下しておりますが、なぜか「楽しい」のです。
この感覚は何とも形容しがたいのですが、とにかく「楽しい」のです。

「あれ?ちゃんと弾けてないけどこんなに楽しかったっけ?」



ある日、購入のお供をした方とコーヒーを飲みながら
「あの時の楽器さぁ、良かったよね〜」
「ふ〜ん」
「うん。なんて言うかさぁ…」
「いっそのこと買っちゃえば?」
「えっ!?でも、もうギター弾けないし…」
「弾けてるじゃん」
「いや…ぜんぜん弾けてないよ…」
「楽しそうじゃん」
「うん…楽しい…」
「決まりっ!楽器屋さん行こう!」
「今から?」


楽器店のオーナーさんに電話を入れ、すぐ行きたい旨をお伝えしました。
オーナーさんはたいそう驚いた様子でしたが、
「それではお店を開けておきますので、思う存分弾きに来てください」

今度は逆にお供をされて楽器店に行き、その日の内にお持ち帰りと
相成りました。


随分前に「金輪際、弾かない」と思ったギターですが、今では楽しく弾いてます。
また嫌になるかもしれませんけどね(笑)



0 件のコメント:

コメントを投稿